スターウォーズEP9スカイウォーカーの夜明け ネタバレ感想

 スターウォーズEP9は、自分の観たかったものを見せてくれた。それは、悩み成長する敵という特異なキャラクターであるカイロ・レン、しょっちゅう凶暴な表情を見せる危うげな主人公レイ、凡百の人間の中から立ち上がった人々の象徴であるフィン、英雄になりきれないダメロン等のそれぞれの結末を無理なく捨てることなく見せてほしい、というものであった。それらがちゃんと描かれていたので、そこでまず及第点であったと思う。

 

 パルパティーンの復活は唐突というのは批判としてはあるだろうが、EP8のスノークがまったく説明なく死んだので、皇帝復活するんだろうなー(黒幕がいないとアイツまじでなんだったのかよくわかんねー)というのが多くのファンの予想であったし、テンポよくて逆に良かったと思う。見たいですか、終盤に満を辞して復活し、尺もなくすぐ死ぬ皇帝。俺は見たくない。

 

 カイロ・レンが皇帝の操り人形ではなく、自発的に行動する戦士であったのも好印象だ。シス・ウェイファインダーを巡る一連の冒険や剣戟はパリッとしており、例えばEP1みたいに露骨にここ長ぇなおい、というシーンがなくてよかった。「シス・ウェイファインダー」ってなんだよ、「シスの羅針儀」とかにしてくれよ。センスを見せてくれ。

 

 EP8が大好きな人々が最も憤慨しているレイの出自であるが、私は、最初から決まっていたことなのであろうと考えている。

よく言われるEP8は全シリーズへの逆張りで、それで失敗したから露骨に路線変更してEP9で全部さらに逆張りしたのだ、というやつに関して、

小説を書いたりする人はご理解いただけると思うのだが、主人公の出生なんて超重要事項を観客の反応でコロコロ変えるなんてありえないでしょ?やったとしたらディズニーは超バカだと思う。あり得ん。

「EP8でレイを誘惑するためにレンが部分的な記憶を利用して嘘の出自を教え、絶望させようとする」

「EP9でレイは真の出自を知る。それは呪われた出自であったが、同時に一抹の救いを持つものでもあったため、仲間の助けもありレイは踏みとどまる」

最低でもこのくらいは決まってたのではないでしょうか。

そもそも、出自に関する衝撃の事実を二作目で知る、だけだと余りにもEP5と一緒すぎる。

EP8で出自が判明したと見せかけて、EP9で更に反転させる。それは、決まっていたのではないだろうか。

ただ何者でもない者も世界を救い得る、という本来はレイ以外のフィンとかが担うはずであった部分をEP8のライアン監督が好きすぎて演出を過剰にやり過ぎた、このくらいが真相でないかと私は思う。

だから、EP8で示された可能性が軌道修正で云々、というのは部分的にしか当たっておらず、そこを批判の中心軸にされても、それはただの好き嫌いの話じゃないの?と思ってしまう。

 

 最後に闇と光全てのバランスを保つような橙色のライトセーバーを持ったレイが、スカイウォーカー姓を名乗るのも、まとめとしてよかった。

名字捨てたらパルパティーン家の父母が可哀想だ、という意見もあるが、あの人たちどう考えても家名から逃れたかった人達だと思う。だから、いいんじゃね。ただ、不満点もあるのでこれは後述する。

 

 パルパティーンといえば、EP3以来の強いパルパルが観れたのも良かった。EP6のときは弱すぎてマジでがっかりしたが、EP3ではとても強いパルパルを見てコレだよコレ!と超興奮した悪役大好きマンの自分である。今回のレジスタンスの船を全部止める皇帝には感動させられた。

細かいところだが、ハックス将軍は本三部作を通して一番ブレないキャラでよかった。

 

 倒したあと、ハグする主人公三人が、お互いのやっていることを知らないくせに盛り上がっているのが興ざめ、みたいな意見があったが……戦いなんてそんなもんでしょ????顔見れば友が頑張ったことなんてわかる、と経験からも私は思う。

 

ともあれ、自分にとっては総じて納得の出来であり、面白かった。

 

肯定してるつもりが批判への反論も混じってしまったが、自分としても不満点はある。

 

 以下、不満点を述べる。

 

本作は必要なセリフやキャラと場面がなく、そのくせ不要なセリフやキャラと場面が多い。

 

これはマジで思う。

 

まず、レン騎士団、あいつら砂漠で戦わせれば良かったじゃん。強さがよくわかんないまま、まさかの終盤でカイロ・レンと同士討ち。強敵を倒した感がぜんぜんありません。

砂漠でレン騎士団に囲まれたレイは持ち前の凶暴さを発揮して何人かを手負いにし、あるいは倒す。決め手はパルパティーンの構えや技だった。そこにレンが到着して「どけ、俺がやる」、レン騎士団は忍者みたいに消える。みたいな展開でどうでしょうか。

 

あと、ファズマ出せよ!小説まで出したキャラが8で死んでるとは思わなかった。

チューバッカが捕まるのをフィンが見つける時に、ファズマが妨害する。苦戦するフィンだが、フォースを発現し、あり得ない感の良さを発揮して倒す。その際、ファズマの兜が取れ、美しい顔を見たフィンは複雑な表情を浮かべ、彼女の目をそっと閉じる。とかなんとか使い道あっただろ、アホー!

 

レイの父母の回想もうーん、という感じ。

「その呪われた名で呼ぶな!娘は渡さん」

とか言っとけば、最後にパルパティーン姓をレイが捨てることに何のわだかまりもないのに。

シスの使いであるオチはパルパティーン信奉者なので、教祖を否定されて激高して教祖の息子夫婦を手にかけるのだ。カルトっぽさが増して良い。

 

アクバー提督の息子、出すんならあのナメクジの代わりにアクバーの息子でよくない?あのナメクジ、必要?

 

プライド元帥、ってこのオッサン誰だよ!

終盤になってからどういう人物か明かされても、感情が無になっちゃったよ。

カイロレン「ハックス!貴様の意見は聞いていない。この件は、プライド元帥に一任する。旧帝国を支えた手腕、期待しているぞ」

カイロレン退出

プライド「“旧”帝国だと?愚かな小僧め」

みたいにするとか、

カイロレン「(指でハックスを止める)プライド元帥に一任する」

プライド「ハッ!」

カイロレン、プライド退出

ハックスの同僚っぽい若い世代の将軍

「カイロ様は、なぜハックス様を差し置いて、あのような本貫定かならぬ老骨を……」

ハックス「(複雑な表情で)いや、いいんだ」

とか謎をふりまいておいて終盤で本編同様に正体を明かすとかにしてくんないと、どういう感情であのオッサン見てればいいかわっかりまっせーん。

 

パルパティーンの唐突な路線変更も説明不足。

パルパティーン「小娘、貴様のような心弱き者を我が器にするのはやめだ。愚かな背教者ともども、我が糧となるがいい」

とかなんとか言ってよ。同じ上映で観てた女子大生のグループ、あのへんからよくわかんなかったって言ってたよ。

 

 というわけで、不満点はいっぱいありますが、これはああすればもっと良かったのになあ、という肯定的なベクトルの不満です。

 

 夜が明けなかったとか言う人も結構おりますが、私的には夜は明けました。

 

みんながみんな夜が明けなかった、というわけではないこと、承知していただければ幸いです。

 

 あと、私については自分にとって満足のいかない展開に出くわした場合、創作を夢想したり、実際に創作してしまうタイプの人間です。

そんな私が、だったら自分で作ろう精神を発揮して書いた作品がこちら。

 

『光武大帝伝』

https://ncode.syosetu.com/n5685db/

 

この作品、「光武大帝伝」は、巷に自分の望むようなテイストの光武帝の伝記がなかったために、自力で生み出した小説です。図らずも編集者の目に止まり、来年3月以降に書籍化(自費出版じゃないよ)が企画されており、正式な告知を待っている状態です。イラストレーターも凄腕の人がついたので表紙や挿絵も期待してください。

 

また、次の作品。

 

西遊記〜Journey to the West〜』

https://ncode.syosetu.com/n8288fr/

 

これは、自分の愛してやまない「西遊記」から様々な訳書や翻案、京劇やドラマの好きな展開を集め、煮〆てつくった俺流西遊記です。

 

というわけで、ブログもいいけど、創作もね!