光武帝〜ハッピーエンドの三国志〜

 三国志は好きだが苦手だ。吉川英治三国志は読み終わった後に号泣したくらいには好きだが、苦手なのだ。

 

……だって、誰も統一しねぇんだもん!

 

吉川英治三国志は、孔明が死ぬところで終わる。その終焉は非常に美しい筆致で描かれ、なんか読んでるだけで訳もなく泣いてしまう凄い文章なので、未読の方は是非読んでほしいと思う。

 

だけどね!

誰も統一しないんですよ!投げっぱなしエンドなんですよ!

 

いやいや馬鹿ですか。正史や三国志演義ではちゃんと“晋”が天下を統一してるじゃないんですか。

投げっぱなしにしたのは吉川英治ですよー、いやだなぁ。もしや素人ですか?

 

知るかー!何だよ、“晋”って!魏、呉、蜀(季漢)の三国だから三国志なんじゃねーのかよ!入ってねーじゃねーか!戦隊の追加戦士かよ!ぶちのめすぞ!

 

いや、もちろん知識としては、蜀が魏に倒され、魏は晋に簒奪され、呉は晋に滅ぼされる。はい、天下統一、めでたしめでたし、良かったね、というのは知ってはいるのだ。

 

でも、そんな燃えない展開あります???

決着がつかないまま、どんどん代替わりしていくのも萎え萎えだし、三国それぞれの末路もひどい。

蜀、前半の主人公を劉備、後半の主人公は諸葛亮と捉えても、蜀が一番最初に滅ぼされるんですよ。主人公の国が最終回より前に負けるとかバッドエンドじゃないですか。

魏は簒奪で誕生した因果がオホーして、瞬く間に自分も簒奪されて滅亡。晋が爆誕する。もうトラジディではなくコメディですよ。

呉、孫皓個人のせいでほぼ自滅。劉禅叩いてる人、こっちにもっとひどいのがいますよ!いいんですか!

 

そして、天下統一した晋ですけど、天下統一した意義が疑われるようなクソ国家に一瞬で堕落するんですよ。八王の乱とか、変な笑いが出ますよ。お前、乗っ取りかましといてコレかよ。上手くやれる自信があったんちゃうんかーい!

 

これが「項羽と劉邦」であれば、劉邦項羽を降して天下統一、チャンチャンである。

 

しかし、「三国志」はどこで終わってもある意味グダグダなのである。すごい。

 

翻って、私の愛好する光武帝である。

劉秀、後の光武帝が登場した時代は、まさに三国志のような群雄割拠の時代である。項羽と劉邦のような、単純な図式ではない。

光武帝は十年以上戦ったが、最終的に残った隴と成の二国を倒し、天下を統一しました。めでたしめでたし。

 

ん、これはまさか?

 

そう、光武帝は、ハッピーエンドで終わる三国志なのである。

 

天下を統一してしまうせいで最後の方は主人公である光武帝が強くなりすぎてしまう、とかの問題はあるものの。

すごいじゃないですか。三国志に感じたイライラが、「光武の争覇戦」にはほぼほぼないんですよ。

 

三国志を読んでいると、光武帝というのはすごく引き合いに出される、あるいは想起させられます。

 

劉備は「私の望みはこんな蜀一国では終わらない。魏も、呉も倒して、光武帝のように天下を統一するのだ」的な事を言います。出来てねぇけど。ビッグマウスか。

 

曹操は内通者の手紙を焼いたりして寛大な人アピールをしますが、これは光武帝が同じ事をやっているのでマネっこだと思われます。

 

他にも、袁紹の進軍ルートは光武帝の進軍ルートをなぞっている、などみんな光武帝を意識しているのが強く強く伝わってきます。

 

逆に、みんながみんな光武帝をマネしたのに、そうなれなかったのは何故なのか。

 

光武帝の時代より、みんな頭が良くなっていたので、決着がつかなくなってしまったのです。

光武の争覇戦と三国時代の違いで最も大きいものは、謀士の量です。

光武帝の時代の群雄はその勢力の長は名前が残るものの、そいつに仕えた軍師みたいなやつはほっとんど出てきません。

三国志はどうでしょうか。クソ脳筋みたいな呂布にすら陳宮がついていますね。

頭がいいやつ同士が小賢しい策をやりまくるので、戦いがアホみたいに長引いた、というのが私の解釈です。

なぜ、頭が良くなったか。それは光武帝に先立つ王莽の治世に原因を探れます。

こいつはやることなすことろくでもない人でしたが、学校を建てまくった、という功績があります。

光武帝は表向きは王莽の治世を否定しましたが、学校を建てる路線は継承しました。彼の後の皇帝達も同じです。

かくして、三国時代が始まる頃にはみんなに学問が行き渡っており、眼鏡キリッみたいなキャラが激増して、戦争に多大な影響を与えたのでした。

 

話が逸れました。光武帝のお話は、ハッピーエンドで終わる三国志、という話でしたね。

 

どうですか!みなさん!ハッピーエンドで、ちゃんと天下統一される三国志、みたくありませんか?

 

ドーン!

 

『光武大帝伝』

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私の書いたこの小説は、後に光武帝となる劉秀の挙兵から天下統一、そして死までを描いています。

詳細は明かせませんが、早ければ来年三月に書籍化され、出版される予定です。イラストレーターも素晴らしい腕前の人がつきましたので、ご期待下さい!

 

三国志を読んで、「え、劉備ここで死ぬの?」

となった方!是非、ご一読ください。